調剤薬局の運営、調剤支援システム「けやきくん」の自社開発と運用、不動在庫管理などを行っています。

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けやきくん製作秘話について

<作成のきっかけ>
この秤量監査システムを作ろうと考えたのにはきっかけがありました。以前、薬局内で誤って他人の印鑑を押印して問題となったことがありました。私は薬剤師ではないのですが、この光景を見ていて印鑑でこれだけ大きな問題となるのであれば、医薬品の秤量誤りや過誤が発生したらパニックになるのではないかと感じたのです。小児科の処方箋が多い薬局では少しでも問題が発生するリスクを減らし調剤過誤の発生を回避したいと考えました。
 秤量監査システムを導入しようとメーカーを探し検討しましたがあまりに高価で、けやき薬局ではとても手が出せません。秤量監査のカタログを詳細に検討した結果、自分の力で作成出来るのではないかと思いチャレンジすることにしました。昨年10月に体調を崩し寝込んでいる時にこの概要を作りました。薬局での私の仕事は薬剤師の先生方が順調に仕事ができる環境を設営することと考えています。秤量監査システムは薬剤師の先生方を守ることを最優先として作成しました。その結果、患者さんを守る事が出来ると想定しました。
<作成経過>
当初、秤量監査データをエクセルで作成しました。下にモデルを設けましたが、表1Sheet1に秤量監査画面を作りSheet2にMEDISのデータを貼り付けます。秤量監査画面のバーコードスキャナー読み取りセルにVLOOKUP関数を組込みSheet2のデータを読み込みます。この際エラー表示が出ないようにすることが大切です。表1A3に下の関数式を入れます。Sheet2には表2のように薬品データを入れます。関数式にはA3のバーコードをSheet2の中から同じデータを探し出しそのセルの2番目を表示させるという関数です。同じデータがなかったときには、Null値を返しエラー表示をさせないようにしています。表1C2にはNow関数を入れ秤量監査時刻を表示させます。これら基本関数の中にマクロを使いクリップボードに入ったテキストデータを読ませるようにします。表1右側にあるアイコンは注文をした際の印刷ボタンです。これにマクロを組み込んで得意先ごとにまとめて印刷させるようにしました。音声読み上げのマクロ設定は表4のとおりです。これをコピーしてエクセルSheet1を右クリック、コードの表示を選択しマクロを貼り付けます。これで音声読み上げを開始するはずです。
関数式 ((IF(ISERROR(VLOOKUP(A3,データ!A$1:B$38400,2,FALSE)),"",VLOOKUP(A3,データ!A$1:B$38400,2,FALSE))
上記関数式FALSEの前の値が表2の列番号です。これを変更することで薬品名、規格、包装数、メーカー名を表示させることが出来るようになります。これだけのものでも秤量監査として使用可能です。ですが監査データを蓄積保存出来ないこと、差分データの追記が手作業になることなどの理由からアクセスでのプログラムに変更しました。
表3.は発注するときの画面です.
この画面に上記関数を入力して注文します。注文はランダムに入力してからマクロボタンをクリックして並べ替えます。このマクロ設定はエクセルツールから新規マクロを選択して印刷までをマウスで進めて決定します。このマクロをマクロボタンとして設定すれば、そのボタンを押すことで一連の作業を遂行します。表3.では、得意先毎に並べ替えて印刷を開始します。これによりランダムに入力した注文は得意先ごとに並べ替えられて印刷されます。
表1.
1 A B C
2 検索バーコード 製剤名 2004/11/14 9:00 PM
3 4987081009121 アドソルビン 0.90グラム
4 4987290160736 乳糖 0.90グラム
5 4987087029512 クラリチン錠10mg 10.00グラム
表2.
1 A B C D E F G H I J K
2 4987294269428 ボンアルファハイ軟膏20μg 0.002%1g 包装小 10 1,200 帝人
3 4987123140195 タケプロンOD錠30 30mg1錠 PTP 10 500 武田薬品
4 4987246710046 バルトレックス顆粒50% 50%1g 分包 1 20 GSK
5 4987112088323 タイシロール錠20mg 20mg1錠 PTP 10 1,000 大正薬工
表3.
検索バーコード 製剤名 規格 包装形態 包装単位 単位 総量数 注文数 得意先 メーカー
4987060005359 ムコダイン錠250mg 250mg1錠 PTP 10 500 潟Xズケン 杏林製薬
4987237620729 マイザークリーム 0.05%1g 包装小 5 250 東邦薬品 三菱ウェルファーマ
4987413740715 ペルサンチン錠100 100mg1錠 PTP 10 100 恒和薬品 日本ベーリンガー
4987081415328 メバロチン錠5 5mg1錠 PTP 10 100 東邦薬品 三共
4987138802934 ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用) 1g 分包 3 567 潟Xズケン ツムラ
4987114277503 カルデナリン錠1mg 1mg1錠 PTP 10 100 潟Xズケン ファイザー

<出会い>
私はアクセスについては、あまり知識がなく見ようみまねで作成しましたが、理屈が分からずPPIを服用しながらの作業の中でAさんと出会いました。昨年薬局のクリーニングをお願いする業者さんを探そうとタウンページを開き,その中から安い業者さんに見積りの上来店頂きました。お掃除の行程の中でワックスを掛けた後しばらく乾燥させる作業がありますが、その時にAさんがパソコンに詳しいことを知りました。その時は専門家というよりも、パソコンを運んでいる人というイメージでした。この出会いによりアクセスに音声読み上げソフトを導入することができたのです。エクセルであればマクロでクリップボード内にコピーしたテキストを読み上げるようにすればOKなのですが、アクセスではどの様にしたらよいか皆目見当が付きませんでした。けやき薬局では薬品情報提供をアクセスで作成した経験がありカード型データはアクセスで構築すべきとの思いがありました。
Aさんに出会い飛躍的に構造が進み薬局内でエクセル秤量監査との交代が始まりました。秤量監査、充填監査、分包監査、棚卸し、そして差分データの自動化。この時点で私にはプログラムに手を加えるなどと言うことは全くできず、現場での意見を集約してAさんに伝えるという連絡係に徹したのです。この秤量監査システムは何回も何回も現場とのやりとりの結果できあがった作品です。例えば充填監査で当初秤量監査時に充填監査は出来ませんでした。一旦秤量監査を終了してから前に戻って充填をする項目を選択しなければなりませんでした。これを秤量監査中に充填出来るようにしました。考えれば当然と思われることですが意外に作成している現場では分からないことです。手入力を極力避けることが何よりも重要と感じたのもその一つです。入力誤りの可能性があることは最初から排除する方法をとりました。また、棚卸しの時に1ml薬価と1瓶薬価の違いや漢方薬のように1g薬価で1包装2.5g、3gといった形態など在庫を数える際に電卓は欠かせません。とても時間の掛かるやっかいな作業ですね。これを何とかしようと考えたのが次のような方法です
  1. 漢方薬、軟膏剤、液剤は包装数、本数を入力するだけで合計金額を表示させる。
  2. 貼付薬も何袋と入力することで合計金額が表示される。
  3. バラ軟膏、500ml液剤は初めに空瓶重量を秤量しておき、その分を差し引くようにする。
  4. 錠剤はシート包装と端数を入力する。
  5. 錠剤は42錠のように予製する場合があり、バラ数が多い場合があるので両方を入力出来るようにした。
  6. 数えた薬剤があとから出てくることもあり、これを簡単に処理するため当該薬剤入力セルに戻るように設定した。
  7. 二重読み込みを禁止した。
<秤量監査システムとして>
アクセスで進化した秤量監査システムは手直しを繰り返してきました。けやき薬局7店舗に導入し棚卸し、見積もり作成と威力を発揮しました。現在、薬価差を取得することは無理との状況下で、15%薬価差益を取得することができました。(これは秤量監査システムだけの力ではありません)もちろん薬局での対応を改善することで薬価差を取得することが必要と思います。
例えば月初に月使用量の70〜80%を注文して配達してもらう頻度を下げる。これにより得意先の人件費が減ります。支払いはサイト二ヶ月を目指す。他店舗展開をされている先生は価格の統一を図り、不要な在庫をしない。在庫金額を下げるために棚卸し、あるいは不動在庫の一覧を作成する。
<今後>

これにより棚卸しが非常に楽になりました。さらに納入価格と注文得意先を表示するようにしたため薬価での棚卸し金額、納入価格での合計金額が瞬時にわかります。棚卸し結果はそのまま見積価格に反映するため見積もりも楽になります。見積もり結果は価格最優先で最安値を出された得意先が頭文字で(例えばスズケンであれば「ス」)と表示され、平均値引率がでます。また、加重平均値引率を出すことも出来るようになりました。薬業界は、再見積り段階的な値引交渉、後値引交渉が多いことから最終価格は変更出来るようにしました。
返品について
私たちは納品を受ける際必ず押印して確認をしますが、返品については伝票なしで商品だけ返して後から返品伝票を受け取ることが多いと思います。いかがでしょうか。そこで返品チェック項目を設けて返品するときはバーコードスキャナーで返品する薬剤を読み込み管理番号を発行するようにしました。返品発行項目を印刷することも可能です。返品伝票が届いたら返品チェック項目の当該医薬品右側に設けた確認ボタンにチェックを入れます。これで返品の確認が二重に監査出来ることになります。
このシステムではもうすぐ在庫管理システムが可能になります。数ある在庫管理システムは確認事項が多すぎてパソコンの前に座っている時間が長く効果的とは言えません。今後もできるだけ簡便に作業出来るシステムに変更していくようお願いしていくつもりです。

表4マクロ内の設定
音声読み上げマクロ設定
Private Sub Worksheet_Change(ByVal Target As Excel.Range)
If Target.Cells.Count > 1 Then Exit Sub
If Not Intersect(Target, Range("A1:A12")) Is Nothing Then
Target(1, 2).Copy
Application.Goto (Target(1, 3))
ElseIf Not Intersect(Target, Range("C1:C12")) Is Nothing Then
Target.Copy
Application.Goto (Target(2, -1))
End If
End Sub
このシステムを作成するあたり一緒に仕事をしたい先生がおられました。この監査システムを作り得たのも小児科の処方箋の問題解決を迫られたときにご一緒した先生がおられたからこそ生まれたものです。薬局の中は一枚岩ではありません調剤室内の問題発生から改善に至るまでを現場の声を反映させながら作り上げました。ご一緒したかった先生にご理解いただきたいと思います。
けやき薬局 黒川登